消滅する契約法 消滅する契約法
−契約の時代におけるコモンローの危機
キャサリン・ミッチェル
山口裕博
A5判 310頁
ISBN978-4-86031-193-3
価格本体5000円+税
発刊2024年12月

内容
 本書は,契約に大きく依存しながらも社会において契約法制度が実質的に弱体化していることについて検討し,多くの人々に影響を及ぼしながらも法学的に査定されることを逃れている形式主義化の進む重要な契約活動の領域を考察していく。
 契約法は,イギリスにおいても契約責任の土台となるとともに,それが機能する見目ざる骨組みを提供しているが,契約をとりまく法律の役割は今や消滅に近づいている。契約が成立して権利および義務を創設する方法は,過去40年間で大きく変化してきた。現在,消費者は増大するオンライン環境においては自らのコントロールがほとんど及ばない自動化されたプロセスを通じて契約を締結している。消滅しつつある契約法の意味と,(もしあるのならば)その復活の可能性を精査する本書は,法制度が異なるものの問題状況が共通する日本にもインパクトを与える。

原著
Vanishing Contract Law: Common Law in the Age of Contracts
Catherine Mitchell. Cambridge University Press, 2022.

正誤情報

目次
第一章 消滅する契約法
一・一 はじめに
一・二 縮小する契約法
一・三 現代契約法における形式主義の復活
一・四 私的秩序化と規制
一・五 コモンローの発展――冗長な企てか
一・六 コモンローの正当性
一・七 将来の挑戦と復活の可能性
一・八 おわりに
第二章 契約コモンローの動向
二・一 古典期以前の契約法
二・二 古典的契約法
二・三 契約法の変容
二・四 関係的理論と福祉国家主義
二・五 二一世紀におけるコモンロー契約法――調査プログラムの再生
二・六 おわりに
第三章 契約化とコモンローの後退
三・一 自由主義契約法の出現
三・二 社会の契約化
三・三 契約化に対する契約法の寄与
三・四 おわりに
第四章 私的秩序化、規制および契約法
四・一 私的秩序化と契約法
四・二 一例―― ISDAマスター契約
四・三 コモンローと規制国家
四・四 法と規制の相違
四・五 スワップの不適正販売
四・六 おわりに
第五章 ギャップを介しての契約
五・一 消費者債務管理とコンシダレーション
五・二 給料日貸付と司法権能
五・三 学資ローンと不公正条項
五・四 秘密保持契約と公序良俗
五・五 おわりに
第六章 契約法に対する将来の挑戦
六・一 商品としての法
六・二 私有化する正義
六・三 契約法と契約の自動化
六・四 おわりに
第七章 コモンロー復活の可能性
七・一 発展する関係的契約法
七・二 関係的契約法の発展
七・三 他の法域での原理に基づくコモンローの発展
七・四 イギリス契約法の改革
七・五 訴訟に対する制約
七・六 おわりに
第八章 結論
訳者あとがき
原注
参考文献
法令索引
判例索引
事項索引

著者・訳者紹介
著者
キャサリン・ミッチェル(Catherine Mitchell)
エセックス大学法学部卒業(1988年),アバディーン大学法学修士(1992年),ハル大学法学博士(2015年)。ハル大学ロースクール教員として23年間勤務した後,2016年にバーミンガム大学ロースクールに移り,2023年同大学教授,2024年9月に退職し,現在同大学名誉教授。2015年より,高等教育アカデミー・フェロー。専門分野は,契約法,商事法および関連領域。
訳者
山口裕博
山梨県大月市出身(1951年)。中央大学法学部法律学科卒業(1974年),同大学大学院法学研究科修士課程英米法専攻修了(1978年),同大学大学院博士課程後期民事法専攻満期退学(1986年)。新潟大学博士(法学)(2002年)。女子美術大学芸術学部助教授(1990年),桐蔭学園横浜大学法学部助教授(1994年),桐蔭横浜大学法学部教授(1999年),2020年に同大学退職。中央大学法学部,東洋大学法学部,明海大学経済学部,国立音楽大学音楽学部,女子美術大学芸術学部および熊本大学大学院法曹養成研究科の非常勤講師を務める。専門分野は,英米法,芸術法。
装画:井川惺亮


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