国家目標の法理論国家目標の法理論
−憲法による公共の福祉の実現
現代憲法研究 Z
石塚壮太郎
A5判上製本 286頁
ISBN978-4-86031-192-6
価格本体5800円+税
発刊2025年2月

内容
 憲法は,国家の目標を定め,国家行為に動因を与える役割を持つが,日本では従来,国家の目標が憲法に規定されているという視点が十分認識されてこなかった。これは,憲法が国家行為を動機づける「目的プログラム」ではなく,むしろ枠づける「条件プログラム」として捉えられてきたためである。しかし,多くの現代立憲国家では,法治国家,社会国家,文化国家,平和国家,環境国家といった具体的な国家目標が憲法に明示され,これらは国家目標規定と呼ばれている。日本国憲法にも25条(福祉国家)や27条(勤労権)にそのような規定が存在するが,解釈論上の位置づけは不明確なままである。本書は,ドイツ憲法学を参照して,国家目標規定の成立過程や機能を明らかにし,国家目的や国家任務との違いを検討する。さらに,生存権や健康権など国家目標から生じた主観的権利の構成と司法的統制を分析し,新たな視座から日本国憲法の再構成を試みる。

目次 →細目次(pdfファイル)
序章
第1節 本書の問題意識
第2節 本書の射程と限界
第3節 本書全体の構成
   第1部 規範類型としての国家目標規定
第1章 国家目標規定の成立とその意義
第1節 国家目標規定の定義
第2節 ワイマール憲法期までの基本権と国家目標規定の区別
第3節 ドイツ基本法における規範カテゴリーとしての国家目標規定の成立
第4節 基本権か,国家目標規定か
第5節 中間総括
第2章 国家目標規定の規範構造
第1節 構成要素
第2節 法的構造
第3節 法的作用
第4節 国家目標規定に基づく司法的統制
   第2部 国家目標の位相
第3章 国家目的と国家目標
第1節 国家目的論の衰退と復権
第2節 国家目的・国家目標・国家任務
第3節 ゾンマーマンによる国家目標の分析
第4章 国家目標の「憲法理論」的役割
第1節 国家目標規定をめぐる議論
第2節 「憲法理論」の役割
第3節 国家目標規定の憲法教義学と「憲法理論」
第4節 中間総括
   第3部 国家目標規定の規範的展開
第5章 憲法による公共の福祉の実現
第1節 公共の福祉の具体化
第2節 基本的国家目標
第3節 憲法上の国家目標秩序
第4節 中間総括
第6章 国家目標規定の目標促進機能
第1節 国家目標規定と具体化法──プラットフォームとしての部分憲法
第2節 国家目標規定の規範的具体化の類型
第3節 社会国家原理の立法による具体化およびその憲法的再構成
第4節 環境・動物保護国家目標の憲法上の展開と司法的統制
第5節 中間総括
第7章 国家目標規定の基本権制約機能
第1節 国家目標規定と基本権制約
第2節 基本権の制約根拠としての国家目標規定
第3節 基本法20a条「動物保護」導入前後の状況──動物保護の法的位置づけ
第4節 国家目標規定と国家目標秩序
第5節 中間総括
   第4部 国家目標の基本権による実現
第8章 「生存権」──最低限度の生存を保障する権利
第1節 「生存権」の輪郭
第2節 「生存権」の構造および内容
第3節 「生存権」に基づく審査
第4節 中間総括
第9章 「健康権」──疾病保険給付請求権
第1節 「健康権」の法的性質
第2節 狭義の「健康権」の発見?──ニコラウス決定
第3節 「健康権」に基づく審査
第4節 中間総括
補章 日本における社会権条項の法的性質
第1節 生存権判例に対する理解の新傾向
第2節 国家目標から主観的権利へ?
第3節 枠組的権利としての生存権
第4節 憲法25条(生存権)の解釈
第5節 憲法27条(勤労権)の解釈
第6節 中間総括
終章
第1節 目的プログラムとしての憲法
第2節 人権カタログに眠る国家目標規定
第3節 広くて弱い権利論か,狭くて強い権利論か,あるいはその中間
第4節 憲法における公共の福祉の展開
第5節 憲法による公共の福祉の実現

著者紹介(データは発刊当時)
石塚 壮太郎(いしづか そうたろう)
日本大学法学部法律学科准教授
1987年 神奈川県生まれ
2010年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
2012年 慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了
2014年 ザールラント大学法経学部留学
2015年 フライブルク大学法学部留学
2017年 慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学
2021年 博士(法学)(慶應義塾大学)
2017年 北九州市立大学法学部法律学科講師
2019年 同准教授
を経て,2021年より現職。


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