集会の自由と「場」への権利 | |||
門田美貴 著 | |||
A5判上製本 246頁 | |||
ISBN | 978-4-86031-190-2 | ||
価格 | 本体4600円+税 | ||
発刊 | 2024年3月 |
内容 集会の自由は意見表明の自由と並び,民主政において根幹を成す憲法上の権利とされているが,現代の都市空間で集会のために用いる「場」を確保することは困難になり,集会を行い公衆に広くメッセージを伝達することができる場所を見出すことは容易ではない。 本書では,これまで日本の憲法学でも参照されてきたアメリカにおけるパブリック・フォーラム論および私有地での集会に関するステイト・アクション論の展開を振り返り,アメリカ連邦最高裁の示した機能的等価性メルクマールおよびそれに着想を得たとされるドイツにおける「公共のフォーラム」概念を検討,さらに公共空間の私化や公権力の監視による集会の自由への萎縮効果等の関連する諸問題を扱い,集会に用いる「場」へのアクセスを保障する理論を構築する。 |
目次 |
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序章 「公共空間からの排除」 | ||||
一 本書の課題──「公共空間からの排除」という問題 | ||||
二 なぜ「集会の自由」か | ||||
(一) 「私化」と集会の自由 | ||||
(二) 諸外国における裁判例 | ||||
(三) 日本の憲法学との接合可能性 | ||||
三 研究手法および本書の構成について | ||||
第一章 従前の法理と「私有地における集会の憲法的保障」 | ||||
一 はじめに | ||||
二 アメリカ判例法理の蓄積とその限界 | ||||
(一) パブリック・フォーラム論 | ||||
(二) ステイト・アクション論 | ||||
三 ドイツにおける基本権拘束の試み | ||||
(一) 「公的任務」メルクマールの定立 | ||||
(二) 「公的任務」メルクマールから「影響力」の考慮へ | ||||
四 「機能的等価性」メルクマールと「公共のフォーラム」概念 | ||||
(一) 「公共のフォーラム」概念の定立 | ||||
(二) 規範的正当化という課題 | ||||
第二章 アメリカにおける修正1条の機能的拡張 | ||||
一 はじめに | ||||
二 他者の管理する場における集会――Logan Valley判決を素材に | ||||
(一) Logan Valley判決の概要 | ||||
(二) 若干の検討──「機能的等価性」メルクマールの意義 | ||||
三 集会の「場」の復権──空間論からの指摘 | ||||
(一) 空間依存的な修正1条論 | ||||
(二) 空間に先立つ修正1条論へ | ||||
四 憲法論による空間論の受容 | ||||
(一) 修正1条の拡張 | ||||
(二) 若干の検討──「機能的等価性」メルクマールの可能性 | ||||
五 むすびにかえて | ||||
第三章 ドイツにおける空間的保護領域の拡張 | ||||
一 はじめに | ||||
二 転轍点としてのフラポート判決 | ||||
(一) 「場」の選択権の保障 | ||||
(二) フラポート判決 | ||||
(三) 広すぎる射程? | ||||
三 「機能的等価性」への着目 | ||||
(一) 公共空間の私化と集会の自由の縮減 | ||||
(二) 着想源としてのアメリカ | ||||
四 防御権アプローチの可能性 | ||||
(一) 「自然的自由」としての「私有地における集会」 | ||||
(二) 「機能的等価性」メルクマールによる保護領域の拡張? | ||||
(三) あらゆる場への保護領域の拡張? | ||||
(四) 請求権の導出? | ||||
(五) 小括 | ||||
五 客観法アプローチの可能性 | ||||
(一) 草案における衡量問題 | ||||
(二) 場との連関性は必要的か? | ||||
六 むすびにかえて──実質的私化という難問 | ||||
第四章 公共空間の私化と「財産権の社会的拘束」 | ||||
一 はじめに | ||||
二 自由な排除から「高められた」基本権保護へ | ||||
(一) 公共空間の私化と基本権保障の後退 | ||||
(二) 法理の修正可能性と課題 | ||||
三 自己拘束説による義務の導出? | ||||
(一) 受忍義務の前提条件 | ||||
(二) 自己拘束説は成立するか? | ||||
四 対案としての社会的拘束説 | ||||
(一) 財産権に「内在」する社会的拘束 | ||||
(二) 公共空間における社会的拘束 | ||||
(三) 「実質的理由」の要求 | ||||
五 検討──社会的拘束説の可能性 | ||||
(一) 「実質的理由」要請の拡張 | ||||
(二) 「高められた」間接的拘束の暫定的擁護 | ||||
六 むすびにかえて | ||||
第四章 補論T アメリカにおける社会的義務論 | ||||
一 はじめに | ||||
二 排除権中心主義 | ||||
(一) 「権利の束」アプローチ | ||||
(二) 「権利の束」アプローチへの批判 | ||||
(三) 排除権中心主義の主張 | ||||
三 社会的義務論による排除権中心主義の相対化 | ||||
(一) 財産権の社会的側面 | ||||
(二) 社会的義務論の導出 | ||||
四 若干の検討 | ||||
(一) 従来の概念の拡張と限界 | ||||
(二) 社会的義務による拡張 | ||||
五 むすびにかえて | ||||
第四章 補論U 財産権者への集会実施の受忍の強制は収用か? | ||||
一 はじめに | ||||
二 ドイツにおける収用と制限 | ||||
三 アメリカ財産権と規制的収用 | ||||
(一) アメリカ憲法における「収用」 | ||||
(二) 「規制的収用」該当性の審査手法 | ||||
四 むすびにかえて | ||||
第五章 「公用物」における集会の自由 | ||||
一 はじめに | ||||
二 道路法依存的な集会――一般使用・特別使用の区別 | ||||
(一) 集会は特別使用か? | ||||
(二) 道路法上の2つの「交通」概念 | ||||
(三) 憲法上の一般使用概念の定立? | ||||
(四) 公用物における「指定」という限界? | ||||
三 一般使用への主観的権利? | ||||
(一) 一般的行為自由による「指定」からの自由? | ||||
(二) 意見表明の自由による「指定」からの自由 | ||||
(三) 「公共のフォーラム」概念による拡張 | ||||
(四) 我が国における「公共のフォーラム」概念の意義 | ||||
四 むすびにかえて | ||||
第六章 集会の監視と萎縮効果に関する予備的考察 | ||||
一 はじめに | ||||
二 基本権行使の内実としての「決定の自由」 | ||||
(一) 何の自由か? | ||||
(二) 「前域保障」による保護領域の拡張 | ||||
(三) 小括 | ||||
三 介入概念の拡張? | ||||
(一) 古典的介入概念 | ||||
(二) 現代的介入概念へ | ||||
(三) 干渉の強度は必要か? | ||||
四 水平的加算による介入の強化 | ||||
(一) 判例における介入の加算 | ||||
(二) 若干の検討──水平的介入加算の客観法的側面 | ||||
(三) 介入の強化と「潜在的集会参加者」への萎縮効果 | ||||
五 むすびにかえて | ||||
終章 |
著者紹介(データは発刊時点) |
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門田美貴(かどた・みき) | ||
1995年生まれ | ||
2018年 慶應義塾大学法学部卒業 | ||
2023年 慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了(博士(法学)) | ||
現在 京都大学白眉センター/法学研究科 特定助教 |