児童福祉と司法の間の子の福祉 | |||
−ドイツにみる児童虐待防止のための諸力連携 | |||
岩志和一郎 編著 | |||
A5判 270頁 | |||
ISBN | 978-4-86031-154-4 | ||
価格 | 本体2700円+税 | ||
発刊 | 2018年11月発売 |
内容 連邦憲法裁判所は、親による養育の優先,国家による監視と支援という憲法要請の基礎に在るものが,子が人格の自由な発展に関する固有の権利の主体であるという理解をし、それを基軸として構成されてきたドイツの児童保護システムは,まさに子が親の下,すなわち家族的な関係の下で,自己責任を備えた人格へと成長する権利を保障しようとするものであることがわかる。 このような考え方は,わが国においても共有し得るものである。そのように考えられる中、法律状態やインフラに関する彼我の差異は認めつつも,ドイツの動向に目を向け続けることは,わが国の今後の児童虐待対応を考える上で,有意な示唆を与えてくれるであろう。 |
目次 |
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第1章 本研究の目的 | 岩志和一郎 | ||
第2章 ドイツにおける子の福祉の危険化回避に関する法的枠組の変遷 | |||
第1節 親子関係法改正法(1997年制定)前の変遷 | 岩志和一郎 | ||
第2節 2000年代における変遷 | ヨハネス・ミュンダー | ||
第3章 少年援助と司法の間の子の福祉─ドイツ側調査からの知見 | |||
第1節 ドイツにおける少年援助と司法の連携の仕組み | 岩志和一郎 | ||
第2節 少年局と家庭裁判所の間における子の福祉の確保のための判断根拠と手続の発展について─ドイツ側調査の報告 | バルバラ・ザイデンシュトュッカー | ||
第4章 ベルリンにおける子の福祉の危険化回避のシステムの展開 | 岩志和一郎 | ||
第5章 児童保護のための少年援助給付の体系 | 橋由紀子 | ||
第6章 2017年改正 児童福祉法について─児童虐待対応における司法関与を中心に | 吉田恒雄 | ||
第7章 本研究から学びえたもの | 岩志和一郎 | ||
資料 | |||
1.ベルリン州区役所の少年局及び保健所における児童保護のための処置の実施に関する共通施行規程 | |||
2.児童の健康と児童保護の促進に関する法 | |||
3.子の福祉の危険化の可能性の通報に関するベルリン統一第1チェックシート | |||
4.ベルリン第2チェックシート 児童保護シート/個人票 |
著者紹介 |
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ヨハネス・ミュンダー(Johannes Münder) | ||
ベルリン工科大学教授 ドイツ・SOS子ども村理事長(2016年末まで) |
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バルバラ・ザイデンシュトュッカー(Barbara Seidenstücker) | ||
東バイエルン工科大学教授 | ||
岩志和一郎(いわし わいちろう) | ||
早稲田大学法学学術院教授 | ||
橋由紀子(たかはし ゆきこ) | ||
帝京大学法学部教授 | ||
吉田恒雄(よしだ つねお) | ||
駿河台大学法学部教授 |
「はしがき」より 旧知のヨハネス・ミュンダー教授(ベルリン工科大学)から,連邦家族・高齢者女性及び少年省の資金を得て,「少年援助と司法の間の子の福祉」というテーマで,子の福祉の危険化に対する少年局と家庭裁判所の対応を中心とする全ドイツ規模での実態調査を行うことを計画しているが,日本の実態調査と合わせる形で共同研究をしないかという話が持ち掛けられた。ミュンダー教授は,1996年から1998年にかけて,バルバラ・ムツケ教授(東バイエルン工科大学),ラインホルド・ショーネ教授(ミュンスター工科大学)と共同で同名の実態調査を行っているが,以来15 年が経過し,法律状態の活発な整備が進んだことから,その間の変化を比較,検証してみようというのが,研究の目的であった。 ……同教授からのお誘いには大いに興味をひかれた。しかし,児童福祉と司法の関係がドイツと大きく異なり,また方法的にも,少年局の職員と家庭裁判所の裁判官に対するアンケートとインタビューによる調査はわが国では極めて困難であることから,その意味での共同研究は断念せざるを得ず,その代わり,ドイツ側の調査に部分的に参加させてもらうとともに,その中で形成された人脈を使って,私たちが独自の視点からドイツの実態について調査を実施することとした。 日本でも,ドイツでも,なお悲惨な児童虐待の事件は絶えない。本研究に関わった方々一人ひとりからは,この悲惨な事件を少しでも減らしたいという強い思いを感じることができた。本書が,そのような方々の思いをのせ,児童虐待防止対策の検討に少しでも役立つものであることを祈りたい。 |