動物の権利 | |||
キャス・R・サンスティン / マーサ・C・ヌスバウム 編 安部圭介・山本龍彦・大林啓吾 監訳 |
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A5判 446頁 | |||
ISBN | 978-4-86031-095-0 | ||
価格 | 本体4000円+税 | ||
発刊 | 2013年11月発売 |
内容 感情に流されずに,人間と動物の関係について,本気の議論をしてみませんか? 人間と人間以外の動物との関係における現在の問題を,動物の権利論を軸として多角的に検討するべく編まれた論文集を, 日本での議論の足掛かりとするべく翻訳。原著者は法学(法哲学,憲法,財産法,動物法),哲学,倫理学を中心に, 女性学さらには神経科学の専門家や動物保護運動に関わる弁護士などで,いずれもそれぞれの分野で長年活躍を続けている人物である。 動物に対する法的保護のあり方はことあるごとに日本でも取り沙汰されてきたが,アメリカでの議論においてここ30年ホットイシューであり続けた 動物の権利論も少しずつ広がりを見せている。人間の作った法で保護されただけの「動物の福祉」を超えて, さらに人権のようなものが動物にあるとすれば,いったいどういったもので,何が含まれているのか? また,人間に所有される「財産」という今の地位が引き起こす様々な問題とは,そして,それを克服できる新たな地位を作ることは可能なのか? 権利を持つ動物がいるとして,どの動物に権利が認められ,認められない動物との境界線はどこに引かれるのか? ――第T部では議論の現状を考察し,第U部では法や政策の実務と理論の新たな方向性を示し,議論を進める論考が収録されている。 翻訳にあたっては想定対象読者を専門家のみならず一般読者にまで拡げ可能な限り平易な文章となるようこころがけ,各章の冒頭には訳者の手により,その章のポイントと日本での議論との橋渡しとなる解説を付している。 |
原著 |
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Animal Rights: Current Debates and New Directions Edited by Cass R. Sunstein and Martha C. Nussbaum. Oxford University Press, Inc., 2004. |
目次 |
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序章 動物の権利とは何か? キャス・R・サンスティン / 大林啓吾 訳 | |||
第T部 CURRENT DEBATES | |||
1 | 動物の権利,一歩ずつ着実に スティーヴン・M・ワイズ / 横大道聡 訳 | ||
2 | 動物の権利 法的,哲学的,そしてプラグマティックな観点 リチャード・A・ポズナー / 山本龍彦 訳 | ||
3 | 種を超え,かつ直観を超える倫理 リチャード・ポズナーへの応答 ピーター・シンガー / 山本龍彦 訳 | ||
4 | 肉食と人食 コーラ・ダイアモンド / 横大道聡 訳 | ||
5 | 動物は財産か,人格か? ゲイリー・L・フランシオン / 土屋裕子 訳 | ||
6 | 権利の客体または主体としての動物 リチャード・A・エプスタイン / 安部圭介 訳 | ||
7 | 境界線を引くこと ジェイムズ・レイチェルズ / 上本昌昭 訳 | ||
8 | 平等ではない動物たち 科学的知識と動物の権利のための法律との接点 レスリー・J・ロジャース&ギゼラ・カプラン / 近藤紀子 訳 | ||
第U部 NEW DIRECTIONS | |||
9 | 鶏小屋の中のキツネ 動物,農事産業,法――現代アメリカの寓話 デヴィッド・J・ウォルフソン&マリアン・サリヴァン / 小山田朋子 訳 | ||
10 | 動物のための新しい財産的な地位 エクイティ上の自己所有 デヴィッド・ファーヴル / 萬澤陽子 訳 | ||
11 | 動物は訴えることができるのか? キャス・R・サンスティン / 大林啓吾 訳 | ||
12 | ハツカネズミと人間 動物の権利に対する,あるフェミニストの断篇 キャサリン・A・マッキノン / 葛西まゆこ 訳 | ||
13 | 動物の権利と人間以外の生命の価値 エリザベス・アンダーソン / 葛西まゆこ 訳 | ||
14 | 「同情と人間性」を超えて 人間以外の動物への正義 マーサ・C・ヌスバウム / 奥田純一郎 訳 |
著者紹介 |
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エリザベス・アンダーソン(ELIZABETH ANDERSON) | ||
ミシガン大学アナーバー校哲学および女性学の教授。主要著書にValue in Ethics and Economics(1995)。価値理論,民主政論,法哲学,フェミニスト的認識論,科学哲学などに関する著作多数。 | ||
コーラ・ダイアモンド(CORA DIAMOND) | ||
ヴァージニア大学ケナン記念哲学講座教授および大学名誉教授。主要著書にThe Realistic Spirit: Wittgenstein, Philosophyand the Mind(1991),また,編書としてWittgenstein's Lectures on the Philosophy of Mathematics, Cambridge, 1939(1976)がある。近刊として,論文集Ethics: hifting Perspectives。 | ||
リチャード・A・エプスタイン(RICHARD A. EPSTEIN) | ||
シカゴ大学法科大学院のジェイムズ・パーカー・ホール記念講座教授,フーヴァー研究所ピーター&カーステン・ベッドフォード記念上席研究員。2010 年よりニューヨーク大学法科大学院教授。 | ||
デヴィッド・ファーヴル(DAVID FAVRE) | ||
ミシガン州立大学法科大学院教授。動物の権利保護基金の理事として20 年以上動物の法的問題に携わる。1977 年以来財産法,1983 年以来野生生物法について教えている。 | ||
ゲイリー・L・フランシオン(GARY L. FRANCIONE) | ||
ニュージャージー州立ラトガーズ大学ニューアーク校法科大学院教授およびニコラス・デベルヴィル・カッツェンバック記念法哲学研究員。著作に,Introduction to Animal Rights: Your Child or the Dog?(2000),Rain Without Thunder: The Ideology of the Animal Rights Movement(1996),Animals, Property, and the Law(1995)。動物の権利に関する法を20年以上にわたり教え,アンナ・E・チャールトンとともに,ラトガーズ動物の権利クリニックの共同所長を務めた。 | ||
ギゼラ・カプラン(GISELA KAPLAN) | ||
ニューイングランド大学(オーストラリア)神経科学・動物行動学研究所教授。鳥類,霊長類,その他の生物の行動の研究を行っている。動物に関する研究の倫理に強い関心を持ち,大学動物倫理委員会の委員長を務め,関連するいくつかの諮問機関に加わった経験を持つ。研究室では,大学院生らとともに動物の福祉の研究にも当たっている。 | ||
キャサリン・A・マッキノン(CATHARINE A. MacKINNON) | ||
ミシガン大学法科大学院エリザベス・A・ロング記念講座教授およびシカゴ大学法科大学院長期客員研究員。ミネソタの農場に育ち,合衆国内外で女性に平等な権利を実現するために,教育者・著述家・法律家・運動家として活動。 | ||
マーサ・C・ヌスバウム(MARTHA C. NUSSBAUM) | ||
シカゴ大学エルンスト・フロイント記念法と倫理学講座教授。哲学科,法科大学院,神学大学院で教鞭をとる。最新著作にHiding from Humanity: Disgust, Shame, and the Law(『感情と法―現代アメリカ社会の政治的リベラリズム』)(2004)。 | ||
リチャード・A・ポズナー(RICHARD A. POSNER) | ||
第7巡回区連邦控訴裁判所裁判官,シカゴ大学法科大学院特任教授。The Problematics of Moral and Legal Theory(1999)をはじめとして,法学・経済学・哲学の諸問題が交錯する分野に関する数多くの著作がある。 | ||
ジェイムズ・レイチェルズ(JAMES RACHELS) | ||
アラバマ大学バーミンガム校で哲学の教授の地位にあった。著作には,Created from Animals: The Moral Implications of Darwinism(1991),Can Ethics Provide Answers?(1997),The Elements of Moral Philosophy(『現実をみつめる道徳哲学』)(4th ed., 2002)がある。2003 年逝去。 | ||
レスリー・J・ロジャース(LESLEY J. ROGERS) | ||
ニューイングランド大学(オーストラリア)神経科学・動物行動学研究所教授。鳥類,霊長類,その他の生物の行動の研究を行っている。動物に関する研究の倫理に強い関心を持ち,大学動物倫理委員会の委員長を務め,関連するいくつかの諮問機関に加わった経験を持つ。研究室では,大学院生らとともに動物の福祉の研究にも当たっている。 | ||
ピーター・シンガー(PETER SINGER) | ||
プリンストン大学アイラ・ディキャンプ記念生命倫理講座教授。著作としてAnimal Liberation (『動物の解放』),Practical Ethics(『実践の倫理〔新版〕』),Rethinking Life and Death(『生と死の倫理―伝統的倫理の崩壊』),One World(『グローバリゼーションの倫理学』)がある。 | ||
マリアン・サリヴァン(MARIANN SULLIVAN) | ||
ニューヨーク州高位裁判所控訴部第1部の次席調査官。ニューヨーク市弁護士会の動物法委員会元委員長,ニューヨーク州弁護士会の動物法委員会委員。 | ||
キャス・R・サンスティン(CASS R. SUNSTEIN) | ||
2008 年よりハーヴァード大学法科大学院教授。Designing Democracy(2001)を含め,数多くの著作をもつ。 | ||
スティーヴン・M・ワイズ(STEVEN M. WISE) | ||
基本権の拡張を目指す会代表。ハーヴァード大学,ヴァモント大学,ジョン・マーシャル法科大学院,タフツ大学大学院獣医学研究科動物と公共政策専攻修士課程などで動物法の授業を担当した経験がある。著作に,Drawing the Line: Science and the Case for Animal Rights(2002),Rattling the Cage: Toward Legal Rights for Animals(2000)。 | ||
デヴィッド・J・ウォルフソン(DAVID J. WOLFSON) | ||
ニューヨーク市の企業弁護士,ハーヴァード大学法科大学院2004年春学期の動物法の授業担当者。また,イェール大学にて動物法文献講読の共同担当,イェシーヴァ大学ベンジャミン・N・カードウゾウ法科大学院の非常勤講師の経験もある。動物法について,多数の論文を発表。ニューヨーク州弁護士会およびニューヨーク市弁護士会において,動物法委員会委員を務める。 |
訳者紹介(肩書きは発刊当時) |
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安部圭介 | |||
成蹊大学法学部教授(英米法) | |||
山本龍彦 | |||
慶應義塾大学大学院法務研究科准教授(憲法) | |||
大林啓吾 | |||
千葉大学大学院専門法務研究科准教授(憲法) | |||
上本昌昭 | |||
成蹊大学法学部非常勤講師(法哲学,移行期における正義論) | |||
奥田純一郎 | |||
上智大学法学部教授(法哲学,生命倫理と法) | |||
小山田朋子 | |||
法政大学法学部准教授(英米法) | |||
葛西まゆこ | |||
東北学院大学法学部准教授(憲法) | |||
近藤紀子 | |||
総合研究大学院大学先導科学研究科学術振興会特別研究員(動物行動学) | |||
土屋裕子 | |||
立教大学法学部助教(医事法,生命倫理と法) | |||
萬澤陽子 | |||
公益財団法人日本証券経済研究所主任研究員(英米法,商事法) | |||
横大道聡 | |||
鹿児島大学教育学部准教授(憲法学) | |||
装丁:根本真路 | |||